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トレイルの生成が高いというユニークな特徴を持った新しいタイプの乳酸菌

公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センター 理事長 吉川 敏 公益財団法人 ルイ・パストゥール医学研究センター
理事長 吉川 敏
公益財団法人 ルイ・パストゥール医学研究センターはフランスの科学者ルイ・パストゥールの精神を継承し、故岸田綱太郎博士によって1986年に設立されました。設立以来、インターフェロンを中心とする免疫の研究、あるいは人々の健康に良い効果をもたらすプロバイオティクスとしての乳酸菌の研究を精力的に行ってきました。 当時、乳酸菌といえば、動物から分離された菌が主流でしたが、岸田綱太郎博士は京都の伝統的な発酵食品であるスグキ、しばづけといった漬物に注目し、植物由来の乳酸菌について検討しました。 そして、1993年にラブレ菌が発見されたのです。ラブレ菌は日本の食文化に根差したスグキの漬物から分離された乳酸菌であり、おかげさまで、今日では“植物性乳酸菌”の代表格として、すっかり定着しているのは皆様もご存じの通りです。 さらに15年に及ぶ研究実績の上、当センターでは、新しいタイプの乳酸菌を見出しました。それがトレイルエスワン菌です。この菌も、ラブレ菌と同じくスグキの漬物から分離された植物由来の乳酸菌です。トレイルという免疫活性物質を指標として、京都府立医科大学と当研究センターが共同研究した結果、トレイルの生成が高いという特徴をもった乳酸菌であることが明らかになりました。ちなみにトレイルとは、私たちの体に備わっているサイトカインという免疫に関わる物質の一つで、がん細胞にアポトーシス(プログラムされた細胞の死)を起こさせます。 この発見は、FEBS Lettersという英文のジャーナルに発表しており、これは乳酸菌とトレイルの関係を世界で初めて明らかにした科学論文となりました(FEBS Letters 584 (2010) 577-582)。 以上のように、トレイルエスワン菌は、トレイルの生成が高いというユニークな特徴を持った新しいタイプの乳酸菌で、当研究センターとしてもラブレ菌とは異なる作用を有する乳酸菌として期待しております。
公益財団法人 ルイ・パストゥール医学研究センター 理事長 吉川 敏一